マーケティングの現状と未来を語る

世の中のニュース、トレンド、ブームをマーケティング視点からわかりやすく解説します

「人民元の切り下げ」は日本にどんな影響をもたらすのか?

中国人民銀行は8月11日から3日連続で、対ドル為替レートの「基準値」を引き下げた。11日に1.9%、12日に1.6%、13日に1.1%引き下げたことは大きなニュースとなった。その後の発表で、これ以上の切り下げはないことも発表され、本件は落ち着きを取り戻している。さまざまな憶測がされた「人民元の切り下げ」。今後また起きる可能性はゼロではないだろう。今一度「人民元の切り下げ」がもたらす日本への影響について簡単に述べたい。

 

■ 日本市場への中国の影響

 

円安によって輸出を主産業とする日本の大企業の業績が上がり、株価が上がり、日本の景気が上向き基調にになりつつある。ようやく最近になって、中小企業を含む市中でも「不景気だ」という声を聞く頻度が少なくなってきた。ただ消費という意味では決して日本経済全体の底上げがされている訳ではないだろう。デパートや家電量販店などの売り上げを支えているのは今や日本人ではなく外国人だ。特に中国人の爆買いは大きな要素である。

 

中国人が日本で爆買いするには、大きく3つの理由がある。一つ目は、円安と連動した為替の優位性。日本で買い物をする方が安く買えるというものだ。二つ目は、海外旅行してお金を使えるだけの富裕層が増加したこと。中国経済の成長スピードが落ちたと言っても、中国は成長を続けている。またそもそも日本の人口の10倍程度にもなるので、富裕層の絶対数が大きくなる。そして三つ目は、安心して正規品を購入できるということ。日本では当たり前のことだが偽造品、模造品を買わされる心配がないということは、中国人にとってはポイントになっている。

 

このような状況において、連日行われる「人民元の切り下げ」がどのように影響するのだろうか。「人民元の切り下げ」とは、人民元安を招くものだ。あまりに生き過ぎた人民元の切り下げは、日本に以下のような影響を及ぼしかねず、対岸の火事ではない。

 

■ 人民元切り下げが日本にもたらす影響

 

一つ目は、円安メリットによる爆買いの減少である。中国人観光客をメインターゲットに据えたラオックスの純利益が前期比で約79倍になるなど、言うまでもなく爆買いの影響は大きい。為替メリットが少なくなることによって、爆買いによる購買額の減少だけでなく、そもそも日本旅行自体が少なくなることも懸念される。

 

二つ目は、円安メリットによる日本企業の利益の減少である。円安メリットを活かし、製造業を主事業とする多く日本企業が、国内工場での生産回帰に動いている。人民元が切り下げられることで、中国があらためて製造輸出業の強化を打ち出してくると、日本の国内工場生産のメリットが薄くなることが懸念される。それは、日本企業の業績とも関連する。

 

すでに日本の大企業は好調な業績を背景に、海外企業のM&Aを仕掛けている。タイミング的には、中国が人民元切り下げになる以前のタイミングで、多くのM&A案件が動いていたことはプラスになった。企業の視点から経済を見れば、日本企業は引き続きグローバル化を促進していくべきであり、その中でM&Aなども積極的に進めるべき時期だろう。また観光の視点から経済を見れば、中国人の爆買いは爆買いとして、買い物に頼らない観光地の魅力作りと外国人観光客の受け入れ体制を整えるスピードを早める時期であろう。

 

日本にしても、中国にしても、政府の方針が経済を大きく左右する。当然ながら、マーケティングも、政治や経済などマクロな観点を見ずして語れない。その意味でも、今後も目が離せないニュースの一つだろう。

錦織圭、高まる全米優勝の期待と広告価値

2015年8月14日、ロジャーズ・カップにて、錦織圭選手がラファエル・ナダル選手に勝利した。8度目の対戦にして初めての勝利だ。この勝利はとても大きい。

 

■ 勝てない相手はもういなくなった

 

ラファエル・ナダルと言えば、ジョコビッチフェデラー、マレーとならびBIG4と呼ばれる現代テニス界を代表する選手だ。特にグランドスラムの一つ、全仏オープンを9回も制するという前人未到の成績を残している。

 

錦織選手は、2014年に全米オープン準優勝、ツアーファイナル決勝進出など目覚ましい活躍を見せた。2015年も、これまでにATPツアーを3度優勝、全豪オープンベスト8など順調な成績を残し、ATPランキングも第4位。全米オープンの準決勝ではジョコビッチ、ATPツアーファイナルではマレーと大舞台でBIG4にも勝利している。

 

その錦織選手がBIG4の中で、唯一勝てていなかったのがナダルだったのだ。2014年の全米オープンでの記者会見において「勝てない相手はもういない」と言った錦織選手。今回の勝利で、実際に勝てていないトップ選手がいなくなったといえよう。ロジャーズ・カップでは準決勝で惜しくアンディ・マレーに敗退したが、今年最後のグランドスラム全米オープンを前に、唯一の苦手要素を克服したことは大きな収穫だ。足に気がかりな点もあるようだが、万全でなくても準優勝した昨年の例もあるので、うまく調整してくれることだろう。

 

■ ますます盛り上がる日本のメディア

 

全米オープンを前にメディア報道もますます盛り上がってきた。今年のツアー3勝目を挙げたシティ・オープン、ロジャーズ・カップとも、昨年まではテレビでも取り上げられることはほとんどなかった。今年は一回戦、二回戦からテレビのスポーツニュースで取り上げられている。日本中で、テニス人気がますます高まっていることを示しているものだ。ナダルに勝利したことで、メディア的には、今年最後のグランドスラムである全米オープン優勝への期待をさらに高めていくことだろう。それに伴い、日本でのテニス人気もさらに盛り上がりそうだ。

 

■ 広告・PRキャラクターとしての価値の向上

 

今後、盛り上がるのはメディアだけではない。ここ数年、グローバル化が急速に進む日本企業からシンボルとして広告やPRに起用されることが増えるだろう。日本企業の場合、海外でのマーケティング活動をするにあたっても、日本で起用している日本人キャラクターをそのまま海外で起用するケースはほとんどなかった。

 

しかし、これからますます世界に打って出ようという日本企業の姿勢を示す目的においても錦織選手の起用は有効になる。なぜならテニスは欧米だけでなくアジアでも人気のあるスポーツだからだ。その中で、世界トップになれる可能性が高まっている錦織選手の起用は、ますます妥当な選択になってくるだろう。プラスのキャラクターイメージ、世界的な認知度、将来へのさらなる可能性、これらを併せ持つ日本人は少ない。このような条件が揃っているからこそ、錦織選手への日本企業の期待値はますます高まっていくのだ。

 

広告・PRキャラクターとして錦織選手がどこまで価値を高められるのか。単純なスポーツ応援という意味だけではなく、錦織選手の経済効果という意味でも、全米オープンの結果には要注目だ。

コンビニコーヒーの未来を占う”3つのキーワード”

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コンビニコーヒー(缶コーヒーではなくカウンター上の機械で提供するタイプのコーヒー)の好調ぶりが続く。セブンイレブンはセブンカフェ、ローソンはMACHI Cafe、ファミマはFAMIMA CAFE。その流れはこれら大手だけでなく、中小のコンビニチェーンにも及ぶ。

 

コンビニコーヒーの登場は2013年。彗星の如く登場し、さまざままメディアのヒット番付にもランクインした。今やコンビニコーヒーは完全に定着し、コンビニにおいてなくてはならない存在と言っても良いほどの存在感を示すようになった。今回は、あらためてコンビニコーヒーを中心にしたコンビニ各社の戦略の違いについて触れていくとともに、コンビニコーヒーの未来を占う3つのキーワードを紹介したい。

 

■ テイクアウト志向のセブン、イートイン志向のローソン

 

まず最初に、コンビニ各社の戦略の違いについて書きたい。一言でコンビニコーヒーと言ってもコンビニチェーンによって大きく2つのグループに分けられる。一つはテイクアウトを中心にした戦略、もう一つはイートインを中心にした戦略のグループだ。セブンイレブンファミリーマートはテイクアウト戦略、ローソンはイートイン戦略だ。

 

各社ともコンビニコーヒーと他の商品の「併せ買い」を増加させたいと考えている点は共通しているのだが、その思惑は少しづつ異なっている。

 

セブンイレブンはコンビニコーヒーで来店を誘引しつつ、オフィスや自宅で飲食をしてもらうための商品を充実させようとしている。そのためすべての商品群をスピーディかつ魅力的な商品開発に余念がない。冷凍食品を始めとするお惣菜、お弁当、デザートは代表的なものだ。そしてマシンのそばにあるドーナツの開発販売もその一環だ。あらゆる商品の魅力が高いからこそ、他のコンビニチェーンよりも高利益率を誇っている。セブンイレブンの基本的な考え方はセブンカフェで来店客数を増やし、その他の商品を買ってもらうことでの客単価を上げるということなのだ。ファミマもセブンイレブンの戦略に近い。

 

一方のローソンは、店舗内外にテーブルやチェアーを用意して、そこで飲食をしてもらおうというイートイン的な考え方に立つ。都心や繁華にある店舗ではスペース的に難しい店舗も少なくないが、それでも東京青山という一等地にある店でさえイートインスペースを用意している。また店舗によっては、店舗内にキッチンを併設し、そこで作った惣菜や弁当を提供しているのも特徴だ。「街のほっとすてーしょん」というキャッチコピーに表されるように、とにかくローソンに来てなるべく長く滞在してもらうことを目的としている。その場での来店客数増加を狙うのではなく、街に根付いた形で、とにかく長期間、長時間ローソンに来てもらいたいのだ。ちなみにローソンのコーヒーは店員が淹れてくれる。セブンイレブンやファミマがセルフサービスであることに対して非効率的なのだが、カフェのようにゆっくりと買い物をしてもらいたいといローソンの戦略がここにも表れている。

 

このようにコンビニチェーン各社のコーヒーを軸にした戦略の違いをまとめたが、セブンイレブンやファミマでもイートインスペースを設ける店舗も出てきた。将来的には、店舗デザインだけでなく、商品ラインナップを含めて、もっと地域に根ざし、適応させた店舗作りを進めていくことになる。早いコンビニではすでに始めている店舗もある。

 

■ キーワード1<マシンを活用した別飲料の開発>

 

コンビニコーヒーの未来を考えると、3つのキーワードが浮かんでくる。順を追ってご紹介したい。

 

まず一つ目はマシンを活用した別飲料の開発だ。

 

今年はかなりの猛暑ということもあり、世間的には冷たい食べ物への注目が集まっている。日本に昔からあるかき氷。今夏はブーム化し、行列店も多く出現している。またパンケーキを始めスイーツブームの発火点として有名な表参道では、台湾かき氷のICE MONSTERに長い行列ができている。猛暑の影響はコンビニにも及んでいる。一例を挙げると、ファミマの抹茶フラッペはかなりの人気になり、発売以降、品切れを起こしている店舗が少なくない。

 

2013年のコンビニコーヒー発売当初はホットコーヒー、アイスコーヒーというシンプルなものからスタートしたが、今後期待されるのは別飲料の開発だ。カップの中身を変えるだけでコーヒー以外の飲料も販売することができるからだ。すでに、ファミマのフラッペ以外でも人気商品が出ている。セブンイレブンのアイスラテは、グリコと共同開発したチョコレートボールがカップに入っており絶妙な甘さで人気だ。ローソンもアイスカフェラテやフローズンラテなど新商品を投入している。

 

カップの中身を変えるだけでなく、トッピングという手法もある。ミニストップではソフトクリームが看板商品だが、このようなソフトクリームのマシンと併用すれば、スタバのフラペチーノのような飲料も販売が可能だ。価格面で見てもスタバなどと戦える可能性は十分にある。

 

外国人観光客の増加に伴い、コンビニに来店する外国人観光客もますます増えている。抹茶を始めとする和テイストの飲料の開発を強化すれば売れていく可能性は高まっていく。

 

切り口を変えるだけで別飲料の開発の可能性はかなり広がるのだ。

 

■ キーワード2<併せ買い商品の開発>

 

二つ目は、併せ買いのための商品開発だ。コンビニコーヒーの出現により、コンビニドーナツが出現したように、コンビニコーヒーと一緒に買ってもらうような商品開発を進めるべきだろう。ドーナツだけ考えても、コンビニコーヒーと相性の良いものと良くないものがある。例えば、セブンイレブンの場合、リングドーナツはコーヒーと相性が良いので販売量が多いが、レモン系のドーナツは相性が良くないので出にくいといったものだ。

 

先日、あるセブンイレブンのスタッフと話をした際、レモン系のドーナツの売れ行きが他に比べて芳しくないのは、コーヒー系と合う食べ物コンビニマシンを活用したアイスレモンティーのようなものがあれば、ドーナツも飲料もさらに売れるのではないだろうか。

 

”併せ買い”商品開発は、飲料と併せ買い商品の両方の販売量を増加させる可能性を秘めるのだ。

 

■ キーワード3<コーヒーメイン客の囲い込み>

 

セブンイレブンnanaco、ローソンのPonta、ファミマのTカードなど、コンビニ各社はポイントカードを活用することで顧客の囲い込みを図っている。これはマーケティング手法として有効な策であるが、コンビニ各社はより踏み込んで、コーヒーユーザーに焦点をあてたプロモーションを行うべき時期に来ている。

 

消費者が「どこのコンビニに行こうか」という視点で店舗を選ぶ場合、上記のポイントカードが有効となる。しかし、消費者が「どこでコーヒーを買おうか」という視点で店舗を選ぶ場合、状況は異なる。とにかくコーヒーを飲みたい時には、選択肢はコンビニだけに限らない。ドトールエクセルシオールカフェ、スタバ、タリーズマクドナルドなど選択肢は増えるのだ。コンビニコーヒーがコーヒー専門店などと遜色ないからこそ、コンビニ各社は「コーヒー独自のポイントカード」を作るなどしてコーヒーを中心としたユーザー囲い込みを図るべきなのだ。「5杯飲んだら1杯無料」というようなコーヒー専用のポイントカードがあればリピート率は向上していく。

 

■ 最後に

 

コンビニの商品開発スピードは早い。こうして記事を書いている間にも、魅力的な商品が開発されていることだろう。そしてコンビニが各業界に与える刺激によって市場は活性化している。ドーナツチェーン店も商品開発にはさらに力を入れている。コーヒー専門店は、プリペイドカードやポイントカードによる囲い込み戦略を強化するなどプロモーションが活発化している。今後もコンビニコーヒーの動きから目が離せない。

”仕切り力”の無さが招いた国立競技場問題

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公私ともども国立競技場の近くにいるということもあり、私にとって国立競技場は隣人のような存在だ。毎週のようにプールを訪れたり、嵐を始めとするコンサートの時には風に乗って音が聞こえてきたり、毎日ように国立競技場の横を通る神宮外苑のランニングコースをで走っていた時期もある。ただ、オリンピックの東京開催が決定した時には、確かに古い建物ではあるので、建て替えたほうが良い部分もあるとは感じていた。それまで長く付き合ってきただけに、その雰囲気がなくなるのは残念な気もしたが、未来に向けて新しく良い方向でリニューアル出来れば良いのではないかと感じたのだ。現在も国立競技場周辺には毎週のように行くのだが、競技場はすでに取り壊され、工事壁の隙間から見えるかつての国立競技場後には土と建設車両があるばかりだ。

 

2015年7月、新国立競技場建設の工事費があまりに高額であり、かつ次から次へと金額が積み上がっていく状況が問題になり、国民の関心を集めた。世界中が注目するオリンピックのメインスタジアムであり、国を挙げて取り組んできたプロジェクトが、なぜこのようなお粗末な状態になってしまたのだろうか。今一度、なぜこの問題が起きてしまったのかを検証したい。

 

デザインに責任はないと言ったザハ氏

 

安倍首相が新国立競技場の建設プランを白紙に戻すと発表したのは7月17日。建設費がかかりすぎるためというのが理由だ。これに対して、デザイナーのザハ氏は、日本の要望通りに出したデザインであり、デザインに責任はない趣旨の発表をした。

 

ここでザハ氏を責めるのは筋違いだ。あのデザインの良し悪しは個人の感覚の問題であり、好きな人もいれば、嫌いな人もいる。ただ、そのデザインを決めたのは決定権限を持った国際コンペ審査委員会である。その責任者は委員長である安藤忠雄氏だ。あのデザインが好きかどうかは別として、正しいプロセスを踏んでデザインが採用されたのだからザハ氏に非はない。ザハ氏のデザイン案には、コスト高の原因とされているキールアーチの部分も入っており、それも含めて安藤氏は採用を判断したのだ。今さらデザインの是非やキールアーチのコストの問題を指摘されても、ザハ氏としては迷惑な話だ。この問題の本質はそこにはない。

 

デザインは選んだがコストは責任外と言った安藤忠雄

 

問題が噴出してから数日経って会見に出てきた審査委員長の安藤忠雄氏。会見において安藤氏は、あれだけの金額がかかる理由がわからず、もっと減らせないものなのかと感じていると話した。またコンペはあくまでデザインコンペであり、コストについては関与していないとも答えた。そして、個人的にはザハ案を続けたいとも発言した。

 

安藤氏と言えば、今なお利用者から大不評である渋谷駅地下工事に携わった経歴を持つ。大型の建築工事は得意分野ではないという声もよく聞く。本当のプロフェッショナルであれば、仕事を引き受ける段階で、自分にできる仕事かどうかを判断する。プロとして自らの知識・経験・技術を提供するわけだから、やってみたいではダメなのだ。よくわからないものを引き受け、迷惑をかけてしまうようであれば、プロとしては引き受けるべきではなかっただろう。厳しい言い方をすれば、この点において安藤忠雄氏は、いままでの栄光を自ら傷つけてしまったのだ。

 

ただ、今回の問題の根幹は安藤氏でもないのだ。このコンペで安藤氏に依頼されていた部分がデザインのみということであれば、プロとしては本当に残念ではあるが、安藤氏は与えられた役割を果たしたということになる。

 

では、今回の問題の根幹はどこにあるのだろうか。

 

今回の問題の根幹

 

今回の問題の根幹は「仕事の頼み方・仕切り方」にある。つまり、ザハ氏や安藤氏に仕事を依頼した人たちのコンペへの仕切りが悪かったということだ。そして、ザハ氏や安藤氏はコメントを出しているものの、責任者のコメントがまったく出て来ないことが問題だ。

 

そもそもオリンピックのメインスタジアムのデザインを決めるにあたり、予算を無視してデザインの良し悪しだけで決められるわけがない。いくら使っても有り余るほどの金があれば、費用を無視してデザインの素晴らしさで選べば良い。ただ現実にそんなことはあり得ない。予算があって、はじめてデザインが出てくる。そして予算内に収まるデザインの中から案を決定することができるのだ。

 

この問題が起きている中、まずは責任者が出てきて「今回のデザイン選定にあたっては、選考基準の作り方が間違っていた」と謝罪すべきなのだ。コンペの段階で「予算・納期・実施目的(狙う方向性含)・決定プロセス(決定権者含)・責任範囲」という基本的なことを決めていないから、今回のような騒動になるのだ。

 

安藤忠雄氏のようにデザインだけを見る人がいても良い。ただ、それであれば、本当にコストまでわかる経験豊かな人物を委員会の委員長に据えて選考・精査・統括すべきだったのだ。安藤氏をはじめデザインだけを見る人はアドバイザーとして参考意見を聞くことにしておけば、こんなことにはならなかっただろう。

 

広告業界のコンペですらありえない話

 

広告業界のプレゼンでも、こんなお粗末な話は聞かない。テレビCMを作るならば、CMを実施する目的があり、予算があって、はじめてCM案を作ることができる。

 

仮に、ある食品メーカーのCMコンペがあるとしよう。

 

メーカー:できるだけ多くの消費者の認知度を高めたいので、アイデア重視で提案してほしい。

 

広告会社:(2週間程度後に)認知度を高めるならば、タレントを起用しましょう。それもできるだけ多くの人に人気のある嵐やSMAPでいきましょう。

 

メーカー:いいね。それで行こう。ところで契約費・出演費・制作費込み込みで予算は5000万円なんだけどお願いね。

広告会社:・・・・・ それは無理です。

 

メーカー:いやいやデザインは良いんだから頑張ってよ。

 

さて、

 

嵐やSMAPを起用したCMであれば、少なくもても1億5000万円以上はかかるのが現実だ。重ね重ね言うが、こんなメチャクチャなやりとりは絶対に起きない。そもそも最初の段階で広告主は予算の提示を行う。そして広告会社はその予算をわかった上で、提案するからには実行・完成に責任を持つ。こんな当たり前のプロセスが、今回の国立競技場建設においては皆無だったのだ。

 

最初から、きちんとした仕切りをしていれば、このような問題は起きなかった国立競技場建設問題。このような状態をを生み出した問題の検証はきちんとすべきだ。確かに、デザインの見直しにより、国民や都民にとっては費用負担は抑えられる方向にいくが、オリンピック招致のプレゼンで提案したデザインが完成しなかった事実は、国際社会における日本そのもの信頼度を低下させるという損失を招いている。

 

そもそも仕切る側には、デザイン能力などはなくても良いのだが、物事がベストな形で進むためのルール作りや人選などのプロセス作りについては、少なくともきちんとやってもらわなければならない。ザハ案の白紙撤回後、安倍総理を責任者として新国立競技場建設に向けて動き出すという話も出ているが、この問題はそんな大げさな話ではない。きちんとした体制とプロセスを整えれば、総理大臣がトップをやるような話ではないのだ。ビジネスをしている人ならば、当たり前の話なのだ。

マーケティング視点から見た”鰻商戦”、空前の盛り上がりの理由

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7月24日は土用丑の日である。本来、鰻の旬は冬である。ところが「鰻=夏」というイメージが日本人には定着している。遡れば、江戸時代。エレキテルで有名な平賀源内が夏に売れないという鰻屋の悩みを解決するために、夏の「土用丑の日」に鰻と食べるという流れを作ったのが始まりだ。暑い夏場だからこそ、栄養のある鰻を食べることで暑さを乗り切ろうというプロモーションは大成功し、200年以上経った今や完全に定着している。その土用丑の日が、今年は空前の盛り上がりを見せている。その理由について4つの要因から解説をしたい。

鰻商戦が盛り上がる4つの要因

1. 生産的要因:

2013年まで鰻の稚魚は不漁が続いていた。しかし2014年に入り、鰻の稚魚の不漁がおさまったのだ。これにより鰻価格の高騰に歯止めがかかっただけでなく、供給量を増やせる可能性が高まったのだ。また稚魚の卸売価格が値下がりしていることも大きな要因だ。

 

2. 消費者の心理的要因:

アベノミクスによる円安メリット受けた投資家やメーカーなど大企業に勤務する人は給料が上がっているので、鰻を食べる財力がある。ただ、テレビや新聞のニュースで報道されているほど日本全体の景気は回復していない。都内でそう感じるのだから地方に関してはなおさらだ。ただ人間、我慢ばかりしてはいられない。節約をしていたら、どこかで反動消費が来るのはよくあることだ。多くの消費者にとって、景気回復への期待感からだけでなく、節約の限界という意味でも、たまには贅沢なものを食べたいという気持ちが高まっているように感じる。

 

3.日程的要因:

今年は7月24日の土用丑の日に加え、8月5日に二の丑もある。これ自体はほぼ隔年起きる状況で珍しいことではない。今年が特別に盛り上がっているのは、稚魚豊漁というポジティブなニュースがあるため、短期間に二度の丑の日が来るということを活かすことが出来ると、鰻を販売するあらゆる飲食店、販売店が意気込んでいるのだ。(余談ではあるが、2014年の稚魚豊漁によって慢性的な鰻不足問題が解消されるわけではない。この点においては引き続き努力が必要である)。

 

4. 気候的要因:

ここ数年の日本の暑さは異常だ。日本各地で30度を超えることは当たり前で35度を超えることも珍しくはない。中には40度を超える地域さえある。暑いからこそ、栄養価の高い鰻を食べて夏を乗り切ろうというムードが生まれている。

 

鰻商戦に力を入れるコンビニ・牛丼チェーン

今年の鰻商戦は、鰻専門店を始めとする飲食店以外の業界の力が入れようが目立つ。特にコンビニと牛丼チェーン店の動きが活発化している。その動向をお伝えしたい。

 

<コンビニの動向>

 

まずコンビニの動向だ。各社とも店頭チラシやポスターによって、6月あたりから早々と鰻弁当の予約受付を開始した。コンビニコーヒー、お惣菜、お弁当、クラフトビール等のクオリティとバリエーションが増えていく中、消費者がコンビニ食材を購入し、自宅で楽しむナカショクは定着した。コンビニとしても、今年のチャンスを活かしたいのだ。コンビニ最大手のセブンイレブンを筆頭にポプラのような中小規模のコンビニチェーンに至るまで鰻商戦に力を入れている。

 

コンビニはあらゆる消費者をターゲットとしているので、国産鰻をメインにした高額な鰻重を提供する鰻屋や中国産をメインにし安価な鰻重を提供する牛丼チェーンとは異なり、国産と中国産の両方をラインナップとして用意している。基本的には予約販売制だ。

 

その中でも、特に注目すべきはローソンだ。土用丑の日に合わせ、鰻をすべて国産の鰻に変更した。その中でも鰻の産地として有名な愛知一色の鰻屋の「炭火手焼き蒲焼重(2980円)」を発売する。2980円と言えば、街の鰻専門店で、鰻丼を食べられる価格である。焼肉では叙々苑監修のものを出したり、材料にこだわったナチュラルローソンの展開など、コンビニ各社のなかで、食に対するこだわりと独自性を打ち出そうとするローソンらしい鰻商戦の取り組み方と言えるだろう。

 

<各社の主なメニュー比較> ※金額は税込

 

セブンイレブン 

九州産「うなぎ蒲焼重(1830円)」中国産「うなぎ蒲焼重(1130円)」

 

ローソン    

愛知一色の鰻屋の「炭火手焼き蒲焼重(2980円)

 

ファミリーマート  

鹿児島産「うな重 上(1880円)」 中国産「うな重(1180円)」

 

サークルKサンクス 

九州産鰻1尾「うなぎ蒲焼重(1980円)」※宮崎県の鰻屋「鰻楽」との共同開発

 

ポプラ        

鹿児島産「うなぎ蒲焼重(2380円)

 

<牛丼チェーン>

 

続いて牛丼チェーンの動向について。牛丼チェーン大手、すき家はテレビCMで牛すきと鰻の入った丼をアピールしている。またうな丼を19円値下げすることで消費者に割安感も与えようとしている。

 

もちろん吉野家など他の牛丼チェーン店も鰻を全面に打ち出している。吉野家は2014年もうな丼を発売していたが、今年はボリュームをアップしたうな重を発売している。その他、過去最高額の1650円のうな重3枚盛りを発売する力の入れようだ。また吉野家はうな丼の通年販売も打ち出している。競合店であるなか卯うな重(790円)に加えてひつまぶし風のうなまぶし(890円)を発売している。

 

牛丼チェーンがこれだけ鰻を打ち出すのは、牛丼に比べて客単価が高くなるためでもある。牛丼チェーン各社の鰻重は基本的には中国産で、鰻屋やコンビニの国産品よりは価格を抑えている。これはコンビニ殿マーケティング戦略の違いからくるものだ。牛丼てチェーン店の場合、お店に来てくれたお客さんに対して「たまには牛丼ではなく鰻はいかがですか」というような狙いが見えてくる。いつも500円程度で食べている人が、いきなり2000円の鰻を食べることは考えられない。ただ1000円前後であれば「たまには贅沢しても良いだろう」とプチ贅沢気分で食べてもらえる可能性が増すのだ。コンビニのような数量限定の予約注文型ではないため、牛丼チェーン店は、高価な在庫を抱えるリスクは背負いたくない。ただ客単価はあげたい。このあたりに牛丼チェーン店の戦略が見えてくる。

 

いずれにしても、かつてのような低価格帯商品争いを繰り返したくない牛丼チェーン店にとって、鰻は格好の商材なのだ。

 

<各社の主なメニュー比較> ※金額は税込

吉野家  

中国産「鰻重 三枚盛(1650円)」 ※一枚盛は 750円

 

すき家 

主に中国産「うな丼(780円)」「うな牛(880円)」

 

なか卯 

「うな重(780円)」「うなまぶし(880円)」

 

最後に

今年の鰻商戦の盛り上がりは多くの要素が重なっており、マーケティング的観点から言えば、盛り上がらないほうがおかしい状況にある。

 

空前の盛り上がりは、鰻丼、鰻重、ひつまぶしだけでなく、今まであまり知られていなかった鰻串の情報までテレビを始めとするメディアで放映されるようになった。焼き鳥、豚串などは知っていても、鰻串の存在を知らない人は少なくない。実は鰻には、かぶと、くりから、八幡巻、肝、背バラなどいろいろな種類の串が存在する。鰻は頭の先から尻尾までほとんどの部分を美味しく食べることが出来るのだ。常に新しい情報を伝えていきたいメディアとすれば、まだ多くの人に知られていない魅力ある情報には大きな価値があるのだ。

 

最後になるが、私も鰻は好きでよく鰻を食べに行く。良い鰻を食べると体が熱くなり、まさにパワーを頂いていると感じることも多いからだ。また、鰻にはビタミンAが豊富に含まれており、目の疲れにも良いと言われている。パソコンやスマホなど、かつてないほど目を酷使している現代人にマッチした栄養食と言って良い。ありがたく鰻をいただき、より良い仕事、より良い生活の糧にしていきたいものだ。

 

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<写真>銀座の鰻屋ときとう。本格フレンチや割烹を低価格で提供する俺のグループ系列の鰻屋。味も雰囲気も抜群であり、人気上昇中の鰻屋。

大戸屋が約3万円の高級天ぷら店をNYに出店する理由

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今週(2015年7月14日)、大戸屋ホールディングス(大戸屋)がニューヨークのマンハッタンに高級天ぷらや(天麩羅 まつ井)をオープンさせた。

 

高級天ぷらや(天麩羅 まつ井)をオープンさせた。

日本では気軽に食べることが出来る低価格帯レストランである大戸屋。アジアでも日本とほぼ同じように定食メニューを提供し、現地の人気を博している。その大戸屋が日本食ブームに乗って、高級店の展開を始めたのだ。

 

なぜ大戸屋は高級天ぷら店をニューヨークに出店したのだろうか。

 

海外に流出する日本の名店

 

「天麩羅 まつ井」の料理長は「なだ万」出身の松井雅夫氏。「なだ万」といえば、日本を代表する日本料理店として有名だが、ここ最近は業績の悪化が目立つ。特に、ここデパートなどでのお惣菜である「なだ万厨房」が増えたことで、日本料理を極めようとする職人志望が少なくなったという。なぜなら「なだ万」に入ってもお惣菜部門に配属されたら、自分の望む道とは異なってしまうからだ。経営側とすれば、ブランド力を活かして、より多くの売上・利益を上げることで、本丸である「なだ万」の店舗自体を維持していこうということなのだろうが、結果としては失敗だった。2014年、なだ万アサヒビールのグループ傘下に入ってしまった。

 

今の日本において、いかに名店と言えど経営は決して安泰ではないケースも多い。苦しいのは「なだ万」だけではないのだ。多くの日本料理店が、今そして数年先の経営に悩んでいる状況がある。だからこそ、それぞれ模索を続けている。そして、経営の選択肢のひとつとして海外進出に注目する日本料理店も増えている。

 

<参考記事>  「なだ万」身売りの衝撃!老舗が大手に買われる理由

allabout.co.jp

 

次々に出てきた高級寿司屋の海外展開

 

すでに日本を代表する名店の海外進出は続々と続いている。例えば、寿司の名店「かねさか」はシンガポールの名門ラッフルズホテルにShinjiという店舗を構えている。毎日、築地の魚介類をシンガポールに空輸しているほど品質にもこだわっており、高価格にも関わらず、いつも客足が途絶えない。日本を代表する寿司の名店「すし匠」もホノルルのリッツカールトンに店舗を構えることが決まっている。また日本屈指の寿司の名店「あら輝」もすでに日本の店舗を閉店しロンドンに移転した。「すきやばし次郎」の小野次郎さんの次のスーパースターとも言われる荒木さんのロンドン移住は「あら輝」ファンだけでなく、日本の飲食業界にとって衝撃的なニュースだった。

 

ニュースでは、大戸屋CoCo壱番屋、ラーメンやうどんチェーン店など1000円前後で食べることができる飲食店の海外進出や現地での人気ぶりばかりが取り上げられるているが、実は日本を代表する高給料理店の海外進出が加速している。

 

なぜ高級寿司屋の海外進出が加速しているのか?

 

10年以上前から寿司は海外でも人気だ。ただ、海外の寿司屋に行ったり、スーパーで販売されている寿司を見たり、食べたりするとわかるのだが、日本で食べられる寿司とは似ても似つかなかったりする。その多くの店は外国人が経営し、見よう見まねで握っている外国人が板前だったりする。そもそも修行もしていないし、本物の寿司屋に行ったことのない料理人までいる。ただ、これまでは、それでも寿司は人気だったのだ。

 

だが、そんな時代は終わりを迎えつつある。日本への外国人観光客の飛躍的な増加によって、本物の寿司や日本食を知る外国人が増えているからだ。その人たちが本国に帰った時にも、それまで食べていた寿司ではなく、本物の寿司を食べたいというニーズが高まっている。

 

一方、日本の経済状況を見ると、少子高齢化やデフレによって決して安泰とは言えない状況が続いている。日本国内だけに目を向けていて、今後も続けていけるのかと感じたり、海外の方がもっと成長できるのではないかという飲食店経営者側の思いもある。

 

つまり、海外でのニーズの高まりと、経営側の意向がマッチし始めたので、今までのような比較的安い日本料理店だけでなく、高級店の海外進出が加速し始めてきたのだ。そして、この傾向は、寿司だけでなく日本料理全般に広がりつつある。それが大戸屋による高級てんぷら店のニューヨーク進出なのだ。

 

日本料理のポテンシャル

 

2013年、和食が世界文化遺産に登録されたように、寿司だけでなく日本料理全体に注目が集まっている。私も仕事柄、外国人が来日した際に食事に行くことも少なくないのだが、彼らが好むものは寿司やラーメンだけではない。

 

例えば、神戸牛など脂ののった霜降りの肉は、海外で食べる機会がなかなかないので、すき焼きやステーキなどは大人気だ。天ぷらも人気であるし、とんかつも人気だ。例を挙げればキリがないほど、多くのポテンシャルを秘めている日本料理。ただ、それらの一流店が海外に進出しているかと言えば、まだまだ少ない。大戸屋の高級天ぷら店の海外進出は、より多くの高級日本料理店が海外に進出するきっかけになっていくのだろう。

なぜ大塚家具のCMは視聴者の共感を得られたのか?

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大塚家具のテレビCMが話題になっているようだ。親子ゲンカを意識させるような内容が入っているためだ。

ネット上で高い大塚家具のCM評価

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面白いのは大塚家具のCM評価がネット上では高いことだ。今まで大塚家具に興味がなかったり、来場しなかった人たちには若い人たちが多い。なぜなら従来の大塚家具の顧客層は高齢層であり、富裕層であり、結婚を控えた子供と来場する親世代だからだ。新しい大塚家具のアプローチに面白いと感じるのは、従来の顧客層ではなく、新しい人たちである。その人たちが大塚家具に来場し、購入するかどうかは別問題としても、新生大塚家具が獲得したい新たな顧客層には、ブランドイメージを高めることが出来たのだ。それがネット上の高評価に現れていると言って良い。

 

なぜ大塚家具のCMは視聴者の共感を得られたのか?

 

今の消費者の動向を見ると、杓子定規だったり、自信満々な企業よりも、冗談がわかるような企業の方が消費者に支持されやすい傾向がある。例えば、2014年に起きたマクドナルドの品質問題。問題の説明にあたったカサノバCEOの自信満々の様子は、話す内容以前にその雰囲気から消費者に受け入れられなかったと言える。

 

もちろんマクドナルドと大塚家具では、発生した問題の重大性が異なる。ただ、「企業が消費者にとってフレンドリーに感じられる存在であるかどうか」を問われている点では共通している。

 

大塚家具のように、いわば稚拙な親子げんかに見える騒動がありながらも、それをシャレにしてしまうようなセンスは消費者に受け入れられやすい時代なのだ。

 

これが大塚家具のCMが高評価を受けている大きな理由なのだ。

 

マーケティングにおける企業姿勢のあり方

 

企業にしてみれば、消費者からのクレームは改善のヒントであるとともに、企業イメージを損なう危険性を伴うリスクでもある。特にソーシャルメディアが発達し、誰でも情報発信ができる今、経営トップの会見だけでなく、店頭の対応ひとつ、お客様電話窓口の対応ひとつが、企業にとって致命傷になりかねない。したがって、ミスがないようにと戦々恐々としている企業は少なくない。

 

ただ、それではミスが起きる可能性は低くなっても、情報も製品も溢れる日本市場で、消費者から選ばれる可能性も低いままだ。大塚家具の事例から得られるヒント、消費者に笑ってもらえるようなフレンドリーな関係作りも有効だということだ。日常の友達関係においても杓子定規な関係よりも、オープンマインドになって、時にはバカなことを笑いあえる関係の方が友達関係は深まったりすることが多い。

 

これからの企業に求められるのは、消費者とのフレンドリーな距離感作りである。それはCMや広告やイベントなどのマーケティングだけでなく、経営のレベルで理解し実践することが有効になってきたのだ。