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錦織圭、高まる全米優勝の期待と広告価値

2015年8月14日、ロジャーズ・カップにて、錦織圭選手がラファエル・ナダル選手に勝利した。8度目の対戦にして初めての勝利だ。この勝利はとても大きい。

 

■ 勝てない相手はもういなくなった

 

ラファエル・ナダルと言えば、ジョコビッチフェデラー、マレーとならびBIG4と呼ばれる現代テニス界を代表する選手だ。特にグランドスラムの一つ、全仏オープンを9回も制するという前人未到の成績を残している。

 

錦織選手は、2014年に全米オープン準優勝、ツアーファイナル決勝進出など目覚ましい活躍を見せた。2015年も、これまでにATPツアーを3度優勝、全豪オープンベスト8など順調な成績を残し、ATPランキングも第4位。全米オープンの準決勝ではジョコビッチ、ATPツアーファイナルではマレーと大舞台でBIG4にも勝利している。

 

その錦織選手がBIG4の中で、唯一勝てていなかったのがナダルだったのだ。2014年の全米オープンでの記者会見において「勝てない相手はもういない」と言った錦織選手。今回の勝利で、実際に勝てていないトップ選手がいなくなったといえよう。ロジャーズ・カップでは準決勝で惜しくアンディ・マレーに敗退したが、今年最後のグランドスラム全米オープンを前に、唯一の苦手要素を克服したことは大きな収穫だ。足に気がかりな点もあるようだが、万全でなくても準優勝した昨年の例もあるので、うまく調整してくれることだろう。

 

■ ますます盛り上がる日本のメディア

 

全米オープンを前にメディア報道もますます盛り上がってきた。今年のツアー3勝目を挙げたシティ・オープン、ロジャーズ・カップとも、昨年まではテレビでも取り上げられることはほとんどなかった。今年は一回戦、二回戦からテレビのスポーツニュースで取り上げられている。日本中で、テニス人気がますます高まっていることを示しているものだ。ナダルに勝利したことで、メディア的には、今年最後のグランドスラムである全米オープン優勝への期待をさらに高めていくことだろう。それに伴い、日本でのテニス人気もさらに盛り上がりそうだ。

 

■ 広告・PRキャラクターとしての価値の向上

 

今後、盛り上がるのはメディアだけではない。ここ数年、グローバル化が急速に進む日本企業からシンボルとして広告やPRに起用されることが増えるだろう。日本企業の場合、海外でのマーケティング活動をするにあたっても、日本で起用している日本人キャラクターをそのまま海外で起用するケースはほとんどなかった。

 

しかし、これからますます世界に打って出ようという日本企業の姿勢を示す目的においても錦織選手の起用は有効になる。なぜならテニスは欧米だけでなくアジアでも人気のあるスポーツだからだ。その中で、世界トップになれる可能性が高まっている錦織選手の起用は、ますます妥当な選択になってくるだろう。プラスのキャラクターイメージ、世界的な認知度、将来へのさらなる可能性、これらを併せ持つ日本人は少ない。このような条件が揃っているからこそ、錦織選手への日本企業の期待値はますます高まっていくのだ。

 

広告・PRキャラクターとして錦織選手がどこまで価値を高められるのか。単純なスポーツ応援という意味だけではなく、錦織選手の経済効果という意味でも、全米オープンの結果には要注目だ。