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「進撃の巨人」4DXと「映画の未来」

先日、「進撃の巨人」を六本木ヒルズの4DXで鑑賞した。マーケティングの仕事をしていると、クリエイティブ視点でも、マーケティング視点でも、意識的にあらゆるエンタテインメントに接することが大事だと考えており、映画、ライブ、観劇などには訪れる機会を意識的に多くしている。

言うまでもなく「進撃の巨人」は今や日本を代表する人気アニメだ。ただ内容を見ると、人を食べてしまうグロテスクなシーンが出てくるような漫画、アニメであり、私が第1巻を読んでいた頃には、ここまで日本全体で受け入れられるとは想像できなかった。今や、セブンイレブン、セゾンなど大手広告主もキャンペーンに採用しているのだ。

 

■ 人気漫画の映画化の難しさ

 

原作人気に対して、映画の評価はあまり芳しくない。これは往々にしてあることで、原作の人気がかなり高くファンの思い入れが強い場合に特によく起きる。その点において、今回は2つほど評価のポイントがあったように思う。一つ目は役に対する俳優のイメージの違いだ。映画では、主役のエレンを三浦春馬、ミカサを水原希子が演じている。その他、石原さとみ、長谷川博巳など人気俳優も出演している。演技の巧拙以上に、原作キャラクターとのマッチングに関して物議を醸し出している。二つ目は「巨人」をどのように表現するのかという点だ。巨人だけ見れば、原作の方が映画よりも恐怖感を感じるような評価が多い。私も映画を見た限り、人を食べるグロテスクなシーンの表現では、気持ち悪さを感じさせる部分もあったが、こと巨人に関して言えば、どこかユーモラスな表情のものも多く、原作のような印象は薄かった。

 

原作漫画を考えずに映画を見れば、俳優の演技も巨人の表現も、それはそれで完成度も悪くない。役柄、配役、巨人の表現においても、原作とは異なる部分は確かにあるが、酷評される完成度ではない。ただ、それでも芳しくない評価がつけられるあたり、「進撃の巨人」に対するファンの思い入れの強さがわかるというものだ。

 

■ 4DXの可能性

 

私は映画を見て感じたのは、人気漫画・アニメを原作の映画化の難しさ以上に、4DXを使った映画の未来の可能性だ。

 

ゆったりした席が映画での振動シーンとともに揺れたり、水がかかるシーンでしぶきが噴出したり、爆発のシーンで場内が光ったり、嫌な臭いが想定されるシーンで変な香りが出される。確かに画期的ではあり、今までの映画とは異なる印象を受けた。

 

ただ、現時点では、撮影が完了した後に、4DXの技術が使える部分を後付けで見つけて制作したという印象だ。東京ディズニーランドの「スターツアーズ」やユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「ハリーポッター」などアミューズメントパークのアトラクションと比べると「映像と設備の一体感」はまだ感じることができなかった。

 

4DX鑑賞料は一人3000円だ。大人一人の映画鑑賞料が1800円に対して2倍弱の金額だ。東京ディズニーランドユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどは5000円以上の高額だが、単独でのエンタテイメント施設の利用料として考えれば、3000円は決して安い金額ではない。今後、視聴者が3000円に見合う価値を感じ、4DXが人気になっていくには、さらなる努力が必要だろう。

 

今後は、4DX上映を前提に、テクノロジーの活用を意識した演出方法をも意識しながら撮影・制作していくことで、映画でもアトラクションでもない新たなエンタテイメントが生まれ、アミューズメントパークなどに行かなくても、街中で気軽に楽しめるようになるかもしれない。

 

さまざまな挑戦が感じられた映画「進撃の巨人」。今後のエンタテインメントのあり方を考える上で、興味深い一作だ。