なぜ、グランクラス、ななつ星が人気になっているのか?
北陸新幹線のグランクラスに初めて乗車した。6列各3席と合計18席しかないほどゆったりした車内。通常の指定席や自由席が1車両で100席以上であることと比べると、どれほど贅沢なのかがお分かりいただけよう。価格も指定席の2倍程度と高額だ。ただ「価格/席数」で考えれば、コストパフォーマンスは決して悪くはない。
グランクラスの雰囲気は、落ち着いた暗めの内装。ベージュとこげ茶のコントラストが上質感を醸し出す。席は飛行機国際線のビジネスクラスのように、シートがリクライニングでき、ゆったりとくつろぐことが可能だ。フットレストも上に上がり、フルフラットではないが、十分に足を伸ばして横になれる感覚だ。グランクラス専用のスリッパも用意されている。これだけ上質感がたっぷりの空間なので、くつろいで眠りについてしまう。
私が乗ったのは約1時間強だった。1時間強という時間であれば、あえてグランクラスに乗らずとも半額以下の指定席や自由席を選ぶという選択肢もある。乗り物を移動の手段ととらえれば、同じ距離を同じ時間で行くのに倍の金額を払うことに有用性を見出さない人もいるだろう。
ただ一方で電車を移動のための手段と割り切らず、移動する時の時間や空間を目一杯満喫しようという人も増えている。だからこそ、グランクラスのような上質な車両が人気になる。また、JR九州の豪華クルーズトレイン「ななつ星」や特急「A列車で行こう」など乗車そのものを楽しむ動きがムーブメントになっているのだろう。
日本人は長い間、豪華なもの、高いものを手にいれることがステータスとされてきた。今の20代以下の人たちには、その考えはあまりない。仕事でも出世を望まず、散財するより貯金をし、自分らしい生活を送りたい。そんな人たちが増えている。今後、このような人たちが年を重ねる中で、時間や空間そのものを楽しむようなビジネスがますます増えて行くことが予測できる。すでにその兆候はブルーボトルコーヒーなどにも見てとてる。このあたりに注目してニュースやトレンドを見ると、新たな発見が得られるかもしれない。