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熱帯化が生みだした今年のブーム「かき氷」

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この夏、日本全体が熱帯化した。各地で35℃を超える日は珍しくなかった。シンガポールやタイなど東南アジアから来たビジネスパートナーや友人たちが、日本はSuper Hotだと口々に言われた。10年前、20年前と比べると日本は確実に暑くなっている。

 

暑さ増す日本列島とゲリラ豪雨

 

7月下旬から8月上旬に軽井沢を訪れる機会があったのだが、避暑地であるはずの軽井沢も暑くなっていた。もともと軽井沢は夏場でも日中は涼しく、朝や夜は寒いくらいの気候である。したがってエアコンは必要なく、設置していない家も少なくなかった。ところが、ここ数年の猛暑でエアコンを設置する家も増えていると聞く。その軽井沢では日中に晴れていても、夕方になるとゲリラ豪雨が局地的に急襲する日がよくあった。中には避暑地であるべき軽井沢が暑すぎるので、別荘を持っていても、室内が確実に涼しい東京で過ごす人もいたようだ。

 

東京でもゲリラ豪雨はいたるところで見られた。青山近辺では豪雨で道路が冠水しているのに、目黒では一滴も雨が降っていないという日もあった。また同じ日なのに時間の違いによって、晴天と豪雨という日もあった。

 

暑さから発生した”かき氷ブーム”

 

この暑さゆえ、今夏のスイーツブームは、冷たいデザートになった。コンビニやスタバなどのコーヒーショップではフラッペ、フラペチーノなどの飲料が売れた。一時期、ファミリーマートでは抹茶フラッペが売り切れるほどの人気ぶりだった。

 

また、ここ数年、パンケーキ、ポップコーンなどスイーツブームの発火点となった表参道ではICE MONSTER という店に大行列が出来た。ICE MONSTERは台湾かき氷の店だ。

 

今夏は空前のかき氷ブームとなった。ICE MONSTERなど台湾かき氷が人気になっているだけでなく、天然氷をつかった昔から日本にあるかき氷の専門店もブームになっている。六本木ヒルズでの夏祭りでも、かき氷に特化したイベントスペースに長い行列が出来た。また、美味しいかき氷専門店が話題になれば、千駄木や十条など都心から少し離れていても、多くの人が訪れた。

 

”新しいビジネスチャンス”が生まれるヒント

 

このモノあまり、情報あまりの中、多くの消費者は興味のある製品や情報だけを入手しようとし、自分に関係ないモノや情報は無視する傾向にある。企業が一生懸命売ろうとしても、消費者は現段階のモノや情報に不満はない。また市場を見れば、一定以上の高性能のモノばかりで市場は飽和化している。常に成長を求められる企業とすれば、消費者ニーズが薄い中で、どうやってモノを売ったら良いか困っている面もあるのだ。

 

その中で、今回のように”暑さに堪えられない”という「消費者の顕在化している問題」はわかりやすい切り口になる。かき氷に限らず、この明確なニーズを把握すれば、自社でやる商品開発、サービス開発、新規事業開発などの方向性は明快になりやすく、必然的に結果もついてくるのだ。

 

ビジネスが成長する上では、製品やサービスの品質、営業の能力以上に、明確なニーズのある市場にいることが強い。成長市場にいれば、多少、品質が悪かったり、営業力が弱くても売れるケースが多いのだ。インバウンド、円安、規制緩和のように国全体が主導することによって生まれるニーズとともに、近年の天候も強いニーズを生み出す要因になっているのだ。今年のブーム「かき氷」は、仕掛けによって生まれたブームというよりは、起こるべくして起きたブームなのだ。