マーケティングの現状と未来を語る

世の中のニュース、トレンド、ブームをマーケティング視点からわかりやすく解説します

吉野家の業績低下に見え始めた低価格ビジネスの限界

f:id:yasushiarai:20150717145544j:plain

 

吉野家の業績が下降気味だ。2015年3-5月の連結決算における純利益は前年同期比54%マイナスとなった。

 

低価格飲食店を苦しめるWパンチ

 

もっとも大きなものは原材料価格の高騰だ。円安だけでなく、そもそもの牛肉価格が高騰していることによって原材料価格が高騰し、利益を圧迫する形となっている。この原材料価格を販売価格に転嫁するために、昨年末に販売価格を値上げしたことも客数減に繋がっている。円安と原材料価格の高騰は、低価格飲食店にとってとても厳しいWパンチなのだ。

 

吉野家の正しい努力

 

吉野家は努力を続けている。夕方以降に減少する客の数を増やすために「吉呑み」というちょい飲みスタイルを始めている。これは既存の設備を変更せずに、メニューも日中の既存メニューである肉を活用するなど新たな投資をほとんどせずに展開している。つまり、効率を最大限高めたアイデア溢れる手法だ。また今回の数字には現れないが、6月よりヘルシーな朝食メニューを投入している点も、新規顧客を取り組むために吉野家が行っている努力が垣間見える。

 

マクドナルドやワタミとは異なり、品質面、マーケティング面に特に問題のない吉野家。現在、吉野家が取り組んでいることは、成功していれば経営の教科書に載ってもおかしくないような好事例になるようなものだ。それでも減益になってしまうあたり、低価格帯の飲食店が抱える問題の深さが浮き彫りになった形だ。この円安状況、生産現場での価格高騰では、低価格帯飲食店はビジネスにならない状況なのだ。

 

低価格飲食店の今後

 

値上げをすれば客離れが起きる。このような恐れがハンバーガーや牛丼チェーン、低価格を売りにするファミレス、居酒屋などにはある。したがって円安が進んでも、原材料が高騰しても企業努力で値上げは極力抑えてきた。その無理な努力が、店頭スタッフ数を少なくしたり、FC店に対する締め付けを厳しくするというような形に出てしまった部分もある。結果、企業に大ダメージになってしまうような品質問題や士気低下問題が起きてしまっている企業もある。低価格は集客や売上増の大きな武器となる。ただ円安、原材料高騰、現場の問題。低価格飲食店にとって、もはや低価格を維持し続けるのは限界の状況が起き始めているのだ。それが、正しい方法を用いても利益が上がらない吉野家の数字から見て取れる。

 

今、好調である低価格飲食店は、競合が値上げしても自社は値上げしないという”我慢比べ”に勝つ形で、結果的に好調に見えたりする。しかし実施は決して安泰ではないのだ。

 

消費者、特にお小遣いがなかなか増えないお父さん達とすれば、少しでも食費は浮かせたいところだが、この先に低価格飲食店の値上げは増えるだろう。消費者にとっては嬉しくない状況が来ることが予想されるのだ。