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2015年はさらに熱い。最新「シェア」事情

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ここ数年、日本人の消費や生活を語る上で欠かせないキーワードの一つが「シェア」だ。レストランで運ばれて来た料理を一緒に来た人と分け合う時に「シェアする?」と聞いたり、仕事において情報を共有する時などに「情報をシェアします」と言ったり、ソーシャルメディア特にfacebookで投稿された内容を拡散する時に「シェア」という言葉を使ったりしてきた。ここ1〜2年でシェアされるもののジャンルが格段に広くなっている。今回の記事では、最新の「シェア」事情についてご説明しましょう。

 

  • 「住居」のシェア

 

2012年からフジテレビで放映されたリアリティバラエティ番組「テラスハウス(通称:テラハ)」。シェアハウスに住む男女の共同生活を視聴者に届けるリアリティ番組だ。一つ屋根の下に住む男女の生活・恋愛の様子を「テラハ」で見たこともきっかけとなりシェアハウスそのものへの注目度が集まった。

 

  • 「自動車」のシェア

 

車をシェアするカーシェアリング都心部に住む多くの若年層は、車に対してステータスを感じなくなっている。そのため自動車メーカーも車種の広告をするだけでなく、車の運転自体の楽しさをPRする啓蒙広告を打つようになってきた。都心部に住む彼らにとって、車はステータスでないだけでなく、それほど必要なものでもなくなって来ている。かつてデートは車ですることが定番だったが、今の若者は車ではなく電車でデートということにも抵抗感が少ない。このような状況の中、必要な時だけ車が使えれば良いと考える傾向が強まっている。結果としてカーシェアリングやレンタカー需要が高まっているのだ。

 

■ 「ファッション」のシェア

 

レンタルファッションが大流行の兆しを見せている。かつて、ファッションのレンタルと言えば、結婚式のウェディングドレスや成人式の着物など、着る機会が極めて限定的にも関わらず価格が高いケースだった。しかし、現在ブレイクし始めているのは通常のファッションのレンタルだ。ブランド品のバッグや靴、流行りの衣装などを低価格で一定期間レンタルする女性が徐々に増えている。この背景には、いつも違った服を着たいが、あまりお金はかけたくないという若年層の女性心理があるのだ。

 

  • 「自宅」のシェア

 

最近徐々にブームになりつつあるのは、自宅のシェアだ。リゾートマンションや別荘にはタイムシェアという考え方が以前より存在する。ただ、これは一部の富裕層向けの話であり、一般的とは言えなかった。自宅のシェアとは、自分がいない期間の自宅を誰かに貸し出すことで賃貸料金をもらうというものだ。夏休みやクリスマス休暇が1ヶ月近くにも及ぶこともあるヨーロッパでは、自宅を貸し出すことで得られる金額で、自分は別の地域の他人の家をレンタルしたり、旅行をするという方法を取る人もいる。この手法を使えば、ホテルや旅館よりも安く、期間を長く楽しむことが出来るようになるのだ。日本ではまだまだ知名度は低いが、Airbnbという仲介サービスも出て来ている。自宅をシェアするということは、これから注目を浴びていくことだろう。

 

  • なぜ、「シェア」人気は高まり続けているのか?

 

なぜ、ここまでシェアはここまで人気になっているのだろうか。その理由の一つは若年層の節約志向の高まりであることは間違いない。将来に不安があるからこそ、出来るだけ出費を抑えたいという人は多い。彼らの多くは、普段からよく使う必要なものだけは購入して、その他のものは出来るだけ購入しないようにする生活スタイルを選んでいるのだ。

 

もう一つの理由はシェアやレンタルに対する価値観の変化だ。バブル崩壊以前は、周りと比較して出来るだけ良い車、良い持ちものを所有することがステータスであった。しかし、バブル崩壊とともにこのステータス感が崩れた。バブルを知らない若年層は、バブルまでの価値観とは無縁の存在なのだ。生まれた時から経済状況が良くない状況だったので、バブル崩壊まで続いた価値観や、より良いモノを所有する消費行動スタイルにはネガティブなイメージすら抱いてしまっているのだ。彼らにとっては、節約をしたり、シェアするということこそ、自分の身の丈に合ったスマートな消費行動スタイルなのだ。

 

■ 「シェア」ブームを後押しする「ユーズド」という言葉

 

「シェア」という言葉に近いところで「ユーズド」という言葉がある。古着のジーンズはユーズドジーンズと呼んでオシャレなものとされている。また、かつて中古車と呼ばれていた自動車も、いつの間にかユーズドカーと呼ばれることが多くなっている。中古車と言われると新車と比べて古くて良くないというイメージが強い。しかしユーズドカーと言葉を変えることによってネガティブなイメージは薄らぐ。むしろ、お金の面で必要以上に無理せず、古くても質の良い車を大切に乗っているというスタイルが、彼らにとってはスマートなのだ。

 

「シェア」にしても「ユーズド」にしても、お金が無いからというネガティブな理由ではなく、今の若年層にはマッチしている。誰かと一緒に住んだり、誰かが使った古いものを使うということは、彼らにとってポジティブな選択なのだ。経済状況が大きく変わらなければ、この傾向がいきなり変わることはない。2015年もますます「シェア」トレンドは続いていきそうだ。