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独立したら、SMAPはまた新たな歴史を作るのか?

2016年1月13日、日本中を驚かせたSMAP解散に関するニュース。決定ではないにも関わらず、スポーツ紙、週刊誌に加え、テレビ各局もニュースで持ちきりだ。テレビ各局は情報番組だけでなく、ニュースでも大きく報じられるなど異例中の異例の取り上げられ方だ。特に驚くべきはNHKも報じたことだ。たとえ解散決定だったとしても芸能ニュースがNHKで取り上げられるのは珍しいことだが、解散していない段階で報じられるのは驚きを通り越して違和感すら感じるものだ。SMAPとはもはや単なる一アイドルではなく、美空ひばりさんレベルに肩をならべる芸能史に残る存在とも言えるだろう。

 

■ SMAPの今後

 

SMAPを育てた女性マネージャーとジャニーズ事務所の関係などについては、あえてここでは触れない。私もテレビや広告業界に長く関わっているので、直接の仕事はないもののSMAPや関係者の方々の姿を見たり、彼らに関するさまざまな話を聞く機会はは少なくなかった。ただ、今回の記事で述べたいのは裏話ではない。本当に解散が決定した場合、今後のSMAPの可能性がどうなるのかについて述べたい。

 

現段階では、木村拓哉さん1人がジャニーズ事務所に残り、他の4人が独立すると言われている。そうなればSMAPとしての活動は難しくなる。全員が円満独立であれば、新事務所にSMAP商標権を譲渡してもらうなどしてSMAPとして活動を続ける可能性は残る。しかしメンバーの所属がバラバラになれば、そうはいかない。ジャニーズ事務所はジュニアの時代からアイドルを養成していたり、年を重ねても近藤真彦さん、東山紀之さんがジャニーズの顔として活躍の場を持っているように、所属アイドルと事務所の結びつきはかなり強い。逆に言えば、ジャニーズではない誰かと一緒に何かをやるという考え方はかなり薄いとも言えるのだ。この点において、SMAPを継続するということは極めて難しいと言わざるをえない。

 

では、独立となった場合、木村さんを除く4人の今後はどうなるのだろうか。

 

10年前までであれば、4人の活躍の場は減っていって厳しい状況になっただろうと言わざるをえなかった。今もその状況は残っているが、状況に変化の兆しも見えてきているのだ。

 

■ なぜ独立後、活躍できない芸能人が多いのか

 

なぜ独立後に活躍できなくなる芸能人が多いのだろうか。やはり、そこには事務所とメディアの関係がある。有力なタレントを多く抱える事務所ほどメディアに対して意見を言うことが出来るのは事実だ。

 

例えば、ある引っ張りだこの俳優がいるとする。どのテレビ局も次のクールのドラマの主役としてその俳優を狙っている。俳優側とすれば選ぶ方になる。そこで事務所とすると主役の俳優を出す代わりに、これから売り出したい事務所の若手を同時に出演させたりするのだ。こうして今は主役になった俳優は少なくない。

 

別のケースで言えば、あるテレビ番組において、タレントの起用法が大手事務所の意向に沿わないからという理由で、そのテレビ局には、そのタレントだけでなく事務所所属タレント全体の出演を減らすという話もある。大手事務所になればなるほど、テレビ局側からすると、これをやられると番組制作が立ち行かなくなるため、事務所への配慮は欠かせない部分が出てくるのだ。

 

独立したタレントのメディア出演に関して、所属していた事務所がメディアに圧力をかけるという話も耳にするが、私は直接聞いていないので不明だ。ただテレビ局側からすれば、大手事務所の機嫌を損ねないために自主的に配慮するということは考えられる事態だろう。

 

このような理由で、いくら能力があっても、売れていても、活躍できなくなる芸能人が多く出てしまうのだ。

 

■ 変化しつつある芸能界の活躍方程式

 

しかし、上記のような時代は終わりを迎えつつある。一つには、かつてほどテレビが力を持たなくなったことが挙げられる。かつて、この俳優がドラマに主演すれば、一定数の視聴率が計算できるという目安のようなものがあった。バラエティなどでも同様だ。しかし今の芸能界を見ても、テレビ局がどうしても起用したい俳優・タレントというのは少なくなってきた。視聴率は低くなり、制作費は削られる中、大物を読んでも視聴率が取れないことも多い。そうなると、事務所への配慮よりも、企画や目新しい起用法で勝負をしていかなければならない必要性が高まってきた。つまり、かつてよりも有名俳優・タレントを抱えている事務所に対してメディアが配慮する必要性が薄まってきているのだ。

 

独立しても活躍できる可能性が高まっている理由がもう一つある。それはソーシャルメディアの存在だ。2015年のNHK紅白歌合戦」はある意味、衝撃的な内容だった。小林幸子さんの復活だ。2011年に事務所問題で揺れ、紅白歌合戦をはじめ、多くのテレビから遠ざかることになった小林さん。小林さんが活躍の場として選んだのがニコニコ動画だった。ネットやイベントでラスボスと呼ばれ、今までの演歌愛好者層ではなく、若者から大きな人気を得るようになった。その勢いは止まらず「紅白歌合戦」への復帰を遂げたのだ。ついに「紅白歌合戦」においても、演歌ではなくボカロ曲「千本桜」を歌い、後ろにはニコニコのコメントが流れた。今回の「紅白」でもっとも大きな話題をさらった一人となった。

 

小林さんが復活できたのは事務所の力ではない。ソーシャルメディアを通じて繋がったファン一人一人の応援が集まったことによって復活できたのだ。つまり、ソーシャルメディアによって、芸能人はマスメディアに頼らない発信方法・活躍方法を得たのだ。また、ソーシャルメディアによって、ファンの声が可視化されるようになり、芸能人の人気度がリアルにわかるようになってきたのだ。

こうした状況を踏まえると、やり方によっては、大手事務所を独立した芸能人も、活躍できる可能性が高まってきたと言えるのだ。

 

多くの日本人がSMAPの存続を望んでいるようだが、最終的にどういう結論になるかはまだはわからない。ただ、独立したとしても、SMAPメンバーには、従来とは異なる新しい活躍の仕方を見せてくれる可能性に期待したいものだ。