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「ATPツアーファイナル」開幕、テニスとラグビーの人気分析

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※写真は筆者が訪れた2015年の全米オープンでの錦織圭選手

いよいよ男子テニス最終戦のATPツアーファイナルが始まった。昨年初出場ながらベスト4に入った錦織圭選手は、今年もランキング第8位に入りATPツアーファイナルに出場できることになっている。今年、世界ランキング第4位まで上がったこともある錦織圭。ただ2014年は全米オープン準優勝などわかりやすい結果を出したことと比べると、2015年の成績にはやや物足りない印象を持っている人もいるかもしれないが、2年連続で世界のトップ8に入っているということは前例のないことで、2014年に続き日本テニスの歴史を塗り替えているのだ。

 

今回は、2014年から人気沸騰したテニスと2015年に人気沸騰したラグビーを比較したい。二つのスポーツに共通した人気沸騰のポイントに触れるとともに、二つのスポーツの可能性を比較してみたい。

 

「錦織 × エアケイ」から「五郎丸 × 五郎丸ポーズ」が示すもの

 

2014年、テニスはもっとも旬なスポーツになった。その理由は、錦織圭選手の躍進だ。前述の通り、全米オープンで準優勝し、ATPツアーファイナルでもベスト4に入った。一般的には、そのスポーツが世界レベルで強くなれば、スポーツ人気は高まる。しかし、強くなるだけでは不十分で、そこに飛び抜けて強い選手とアイコンとなる武器があることが重要だ。強い選手がいて、アイコンになる武器があることで、そのスポーツは、それまでまったく興味のなかった人たちにまで浸透していくのだ。2014年は錦織選手がその存在だった。錦織選手にはエアケイという武器があった。エアケイはテニスを知らない人にもわかりやすく、子供達までがテニス教室に通い、ユニクロのウェアを着て、エアケイの真似をした。

 

2015年にもっとも旬になったスポーツはラグビーだ。それまで1勝しかしたことがなかったワールドカップで3勝を挙げる快挙を成し遂げた。その中には優勝候補であった南アフリカもいた。歴史的快挙を成し遂げたラグビー日本代表。その中心にいたのは五郎丸歩選手だ。そして、五郎丸選手がキックを蹴る前にする五郎丸ポーズが大人気になった。カンタベリーショップでは代表のレプリカユニフォームが完売となり、年明けまで入荷しない状況が続いている。五郎丸ポーズを真似る小学生も続出している。まさに2014年のテニス、錦織人気と同じ構図である。

 

重要なことは、強さの定着

 

テニスにしても、ラグビーにしても「強くなった競技 × ヒーロー(ヒロイン) × アイコン(となる武器)」があったため大人気になった。ただ、これが続くかどうかは、その競技が強くあり続けることだ。そのためには、ヒーロー(ヒロイン)に続く第二、第三の存在が出てこなければならない。

 

テニスに関しては、錦織圭選手が2014年に続いてATPツアーファイナルに出場し、世界一を獲得できる可能性を感じさせるほどのポジションにい続けている。それだけでなく、テニスの国別対抗戦デビスカップでダニエル太郎選手が活躍したり、全米オープンなどで西岡良仁選手が活躍するなど第二、第三の存在になりうる若い選手が育ってきている。2014年ほど目覚ましいニュースはないものの、着実にその素地が出来ているのだ。

 

ラグビーに関しては、7人制ラグビーの2016リオオリンピック出場も決定した。また、2019年のラグビーワールドカップ日本開催に向けて、注目も集まってくるだろう。選手でも、リーチ・マイケル選手、山田章仁選手など実力と人気を兼ね備えた選手がいる。

一時期、日本のマイナースポーツ界では、ヒーローやヒロインを作ることで、メディアの注目を集め、人々の注目を集めるPR的な戦略を取っていた。確かに一時的には、そのルックスや言動によって注目は集めることができる。しかし、彼らが世界のトップと互角に戦える状況にならなければ、そのスポーツ自体の人気が定着することは難しい。テニスも、ラグビーも世界のトップと互角に戦えることを証明した。これからは、ヒーロー・ヒロインやアイコンがあるのと同じ以上に、これからも世界トップと互角以上の戦いをしていくことが人気上昇の鍵になってくるのだ。

 

ラグビーとテニスの可能性の比較

 

ラグビーとテニスを比較してみよう。

 

ラグビーがテニスよりも盛り上がる可能性がある点としては、国内リーグが充実している点だ。テニスが錦織選手をはじめとするトップ選手の試合を国内でなかなか見られない一方、ラグビーは国内で試合が見やすい状況にある。また2019年に世界最高を決めるワールドカップの日本開催が決定している点も有利だ。テニスは全豪、全仏、全英、全米の4つのトーナメントとATPツアーファイナルが世界最高峰の試合だ。日本で最高ランクの試合は楽天オープンで、最高峰レベルの試合はない。2015年はバブリンカ、錦織、チリッチなどが出場したがビッグ4と呼ばれるジョコビッチフェデラー、マレー、ナダルは出場しなかった。以前のブログ(「錦織圭選手は2015年にどれだけの経済効果をもたらすのか?」)にも書いたが、日本でテニス人気がさらに沸騰するためには、世界最高レベルの試合を日本で見られる環境が重要であり、できればATPツアーファイナルの招致を実現させたいところだ。

 

テニスがさらに盛り上がる可能性がある点としては、競技者の裾野の広さと多いことだ。テニスは老若男女がプレーできる。錦織選手を始め、日本テニスが強くなれば、さらに人気は高まるだろう。長年に渡り、テニスコートは減少傾向にあり、テニス人気も停滞気味であったが、錦織選手の活躍以降、都内各地のテニスコートが取れない状況も増えてきた。

 

ラグビーにも大きな可能性はある。過去を振り返っても、ラグビーがここまで人気になったことはない。言わば初めてのことだ。したがって、人気が拡大していくポテンシャルは大きいとも言える。しかも、今は男子ラグビーが人気だが、女子ラグビーもある。サッカーでも、なでしこジャパンが活躍し、大人気になったように、女子ラグビーにも期待がかかる。すでにラグビーをする女子もいるが、今後は見るだけでなく、実際にプレイする女子も増えていくだろう。

 

日本での競技人口は、テニスは約500万人に対してラグビーは約50万人にも満たないが、単純に競技人口の比較ではなく、テニスにもラグビーにも将来的には大きな可能性が秘められているのだ。

 

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