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” インバウンド消費”の象徴。春節「爆買い」を振り返る

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2014年、訪日外客数が1300万人を突破したことに象徴されるように、外国人の日本旅行ブームは日を追うごとに高くなっている。2015年に入ると、その勢いはさらに加速しているように見える。東京だけでなく大阪、京都、そして観光名所のある地方でも外国人観光客の姿は増えている。

 

春節」という言葉。今年になって急激にテレビやインターネットなどメディアで目にしたり耳にしたりすることが増えたという人も多いだろう。中華圏の旧正月を示す言葉で2015年は2月18日から2月24日までのことを示す。今回は、2015年の春節における中国人の購買行動をまとめてみたい。

 

銀座に日本人がいない?!

 

春節初日、私は都内各所へ現地調査へ足を向けた。どこも外国人観光客で賑わっていたのだが、とりわけ驚いたのは銀座の光景だ。三越を起点に新橋方面に向かい博品館あたりまで観光バスがズラッと並んでいたのだ。歩いていてもすれ違うのは中国人ばかり、日本語は聞こえず中国語だけが聞こえるという今まで日本では感じたことのない違和感さえ覚えた。中国人観光客はブランド品の大きな紙袋に加え、多くの人がラオックスで購入した電化製品を手にしていた。松坂屋跡地の横にあるラオックス。かつての名店も経営が苦しくなり、2009に中国資本の企業となった。その後、秋葉原店などが中国人対応をいち早く行っていたため、秋葉原店はヨドバシカメラと並び、買い物スポットとなっていたのだ。この日、銀座ラオックスの店内はごった返していて、入店するのも難しいような状況だった。

 

”爆買い”されるステンレスボトル

 

中国人観光客が購入する家電としては炊飯器が定番だ。銀座ラオックスでも、有楽町ビックカメラでも、秋葉原ヨドバシカメラでも、多くの中国人観光客が購入していた。今、炊飯器以上に人気を感じさせるのがステンレスボトルだ。店の免税コーナーにはステンレスボトルが山のように陳列されていた。そして、それをまるで菓子を買うかのごとく、次から次へと購入しているのだ。しかも多い人は10個以上も購入している。中国人は日本人よりも、飲み物を温かく飲む傾向が高い。高性能な日本製のステンレスボトルは、日本より寒い地域で、温かいものを飲む頻度の高い中国人には、日本人以上に価値のあるものなのだろう。

 

根強い人気の腕時計、急上昇の洗浄便座

 

中国人観光客が買いたいものは、徐々に変化している。ただ、その中でも根強い人気を誇るのが腕時計だ。数十万円のものから100万円を超えるものまで購入している中国人の姿を見かけた。ある中国人に聞けば円安という理由だけでなく、日本では間違いなく純正品が購入出来るということで、時計だけでなく家電他の製品を購入するということもあるようだ。中国経済の発展、それに伴う富裕層の増加に伴い、最近では洗浄便座も人気になっており、売り切れ店まで出ていた。

 

過去最高の売上げを記録したドラッグストア

 

ドラッグストア人気はとても高い。ドラッグストアはどこも中国人観光客で賑わった。日本ブランドの化粧品、サプリメントや健康食品、菓子、日本製の薬に至るまで飛ぶように売れた。例えば、大阪のツルハドラッグ道頓堀店では、2015年の春節時期に過去最高の売上げを記録している。ドラッグストアに准ずる業界として、100円ショップやドン・キホーテなどもこれらの商品やちょっとしたお土産を購入する中国人観光客でごった返した。

 

中国人の”爆買い”はマンションや食品にまで

 

”爆買い”に関しては、もはやジャンルを問わなくなってきている感さえある。東京都内のある不動産業者によれば、マンション販売のうち10%程度は中国人相手だそうだ。投資用というケースもあれば、日本を訪れた時にのみ使用するケースなど用途はさまざまだ。当然ながら、彼らの支払いはローンではなく即金だ。

 

2014年10月の免税範囲拡大に伴い、食品も対象となった。それを受けて東急百貨店本店のように食品フロアに免税カウンターを設ける店も出てきた。海外における和食人気は世界文化遺産に登録されたことからもわかるように高い。それだけにとどまらず、日本の食のレベルの高さは菓子のようなものにまで及ぶ。ドラッグストアや100円ショップのような店でも、菓子を箱ではなくダンボール買いする中国人の姿を何度も見かけた。また魚介類や肉類など生鮮品に関しても、発泡スチロールの箱に保冷剤を詰めてまで持ち帰ろうとする人もいた。

 

本格的に中国シフトし始めたデパート・量販店

 

大手でパート、三越銀座店では春節期の売上げが対前年比で約3倍になり、期間中の売上比率の4割を免税売上高が占めるまでになった。デパートだけでなく家電量販店やドラッグストアでも春節期間は、対前年比や対前週で2~3倍の売上高を軒並み記録している。日本市場において2月と8月は消費の閑散期と呼ばる。その閑散期であるはずの2月に春節という大きな消費のヤマが登場したことは、デパート・ドラッグストア・コンビニ・量販店・宝飾/時計店・アパレル店・等、多くの業界にとって歓迎すべき状況だ。

 

次の”爆買い”はいつなのか?

 

2015年の春節は日本を訪れる中国人観光客が急増したように、外国へ旅行する中国人観光客が多かった。その一方、春節期の中国国内での小売店売上高の伸び率は下がりつつあるのだ。つまり、今後ますます大型連休に海外旅行する中国人は増えて行くということだ。そして、次の大型連休は10月1日から7日までの国慶節だ。2015年の春節を見て、あらゆる販売店が夏休みから国慶節に向けて、品切れにならないような商品の準備、中国人観光客への来店プロモーション計画、中国語が出来るスタッフの起用など準備を進めていくことだろう。

 

このまま行けば、2015年に訪日外客数は1500万人を突破することも難しいことではない。そして政府が掲げる2020年訪日外客数2000万人の目標も、前倒しで達成出来るかもしれない。なぜなら中国人観光客はまだまだ増加する上、NEXT中国であるタイやマレーシアなどの東南アジア諸国も次々に成長し、日本へ旅行する観光客も増加していくからだ。2015年1月の初売りそして2月の春節。まだ日本人の消費意欲が上がらず、節約意識が依然として高い中、日本の販売店の好調さを支え始めた外国人。今後、ますますその重要性は高まっていくことだろう。