コンビニコーヒーの未来を占う”3つのキーワード”
コンビニコーヒー(缶コーヒーではなくカウンター上の機械で提供するタイプのコーヒー)の好調ぶりが続く。セブンイレブンはセブンカフェ、ローソンはMACHI Cafe、ファミマはFAMIMA CAFE。その流れはこれら大手だけでなく、中小のコンビニチェーンにも及ぶ。
コンビニコーヒーの登場は2013年。彗星の如く登場し、さまざままメディアのヒット番付にもランクインした。今やコンビニコーヒーは完全に定着し、コンビニにおいてなくてはならない存在と言っても良いほどの存在感を示すようになった。今回は、あらためてコンビニコーヒーを中心にしたコンビニ各社の戦略の違いについて触れていくとともに、コンビニコーヒーの未来を占う3つのキーワードを紹介したい。
■ テイクアウト志向のセブン、イートイン志向のローソン
まず最初に、コンビニ各社の戦略の違いについて書きたい。一言でコンビニコーヒーと言ってもコンビニチェーンによって大きく2つのグループに分けられる。一つはテイクアウトを中心にした戦略、もう一つはイートインを中心にした戦略のグループだ。セブンイレブン、ファミリーマートはテイクアウト戦略、ローソンはイートイン戦略だ。
各社ともコンビニコーヒーと他の商品の「併せ買い」を増加させたいと考えている点は共通しているのだが、その思惑は少しづつ異なっている。
セブンイレブンはコンビニコーヒーで来店を誘引しつつ、オフィスや自宅で飲食をしてもらうための商品を充実させようとしている。そのためすべての商品群をスピーディかつ魅力的な商品開発に余念がない。冷凍食品を始めとするお惣菜、お弁当、デザートは代表的なものだ。そしてマシンのそばにあるドーナツの開発販売もその一環だ。あらゆる商品の魅力が高いからこそ、他のコンビニチェーンよりも高利益率を誇っている。セブンイレブンの基本的な考え方はセブンカフェで来店客数を増やし、その他の商品を買ってもらうことでの客単価を上げるということなのだ。ファミマもセブンイレブンの戦略に近い。
一方のローソンは、店舗内外にテーブルやチェアーを用意して、そこで飲食をしてもらおうというイートイン的な考え方に立つ。都心や繁華にある店舗ではスペース的に難しい店舗も少なくないが、それでも東京青山という一等地にある店でさえイートインスペースを用意している。また店舗によっては、店舗内にキッチンを併設し、そこで作った惣菜や弁当を提供しているのも特徴だ。「街のほっとすてーしょん」というキャッチコピーに表されるように、とにかくローソンに来てなるべく長く滞在してもらうことを目的としている。その場での来店客数増加を狙うのではなく、街に根付いた形で、とにかく長期間、長時間ローソンに来てもらいたいのだ。ちなみにローソンのコーヒーは店員が淹れてくれる。セブンイレブンやファミマがセルフサービスであることに対して非効率的なのだが、カフェのようにゆっくりと買い物をしてもらいたいといローソンの戦略がここにも表れている。
このようにコンビニチェーン各社のコーヒーを軸にした戦略の違いをまとめたが、セブンイレブンやファミマでもイートインスペースを設ける店舗も出てきた。将来的には、店舗デザインだけでなく、商品ラインナップを含めて、もっと地域に根ざし、適応させた店舗作りを進めていくことになる。早いコンビニではすでに始めている店舗もある。
■ キーワード1<マシンを活用した別飲料の開発>
コンビニコーヒーの未来を考えると、3つのキーワードが浮かんでくる。順を追ってご紹介したい。
まず一つ目はマシンを活用した別飲料の開発だ。
今年はかなりの猛暑ということもあり、世間的には冷たい食べ物への注目が集まっている。日本に昔からあるかき氷。今夏はブーム化し、行列店も多く出現している。またパンケーキを始めスイーツブームの発火点として有名な表参道では、台湾かき氷のICE MONSTERに長い行列ができている。猛暑の影響はコンビニにも及んでいる。一例を挙げると、ファミマの抹茶フラッペはかなりの人気になり、発売以降、品切れを起こしている店舗が少なくない。
2013年のコンビニコーヒー発売当初はホットコーヒー、アイスコーヒーというシンプルなものからスタートしたが、今後期待されるのは別飲料の開発だ。カップの中身を変えるだけでコーヒー以外の飲料も販売することができるからだ。すでに、ファミマのフラッペ以外でも人気商品が出ている。セブンイレブンのアイスラテは、グリコと共同開発したチョコレートボールがカップに入っており絶妙な甘さで人気だ。ローソンもアイスカフェラテやフローズンラテなど新商品を投入している。
カップの中身を変えるだけでなく、トッピングという手法もある。ミニストップではソフトクリームが看板商品だが、このようなソフトクリームのマシンと併用すれば、スタバのフラペチーノのような飲料も販売が可能だ。価格面で見てもスタバなどと戦える可能性は十分にある。
外国人観光客の増加に伴い、コンビニに来店する外国人観光客もますます増えている。抹茶を始めとする和テイストの飲料の開発を強化すれば売れていく可能性は高まっていく。
切り口を変えるだけで別飲料の開発の可能性はかなり広がるのだ。
■ キーワード2<併せ買い商品の開発>
二つ目は、併せ買いのための商品開発だ。コンビニコーヒーの出現により、コンビニドーナツが出現したように、コンビニコーヒーと一緒に買ってもらうような商品開発を進めるべきだろう。ドーナツだけ考えても、コンビニコーヒーと相性の良いものと良くないものがある。例えば、セブンイレブンの場合、リングドーナツはコーヒーと相性が良いので販売量が多いが、レモン系のドーナツは相性が良くないので出にくいといったものだ。
先日、あるセブンイレブンのスタッフと話をした際、レモン系のドーナツの売れ行きが他に比べて芳しくないのは、コーヒー系と合う食べ物コンビニマシンを活用したアイスレモンティーのようなものがあれば、ドーナツも飲料もさらに売れるのではないだろうか。
”併せ買い”商品開発は、飲料と併せ買い商品の両方の販売量を増加させる可能性を秘めるのだ。
■ キーワード3<コーヒーメイン客の囲い込み>
セブンイレブンのnanaco、ローソンのPonta、ファミマのTカードなど、コンビニ各社はポイントカードを活用することで顧客の囲い込みを図っている。これはマーケティング手法として有効な策であるが、コンビニ各社はより踏み込んで、コーヒーユーザーに焦点をあてたプロモーションを行うべき時期に来ている。
消費者が「どこのコンビニに行こうか」という視点で店舗を選ぶ場合、上記のポイントカードが有効となる。しかし、消費者が「どこでコーヒーを買おうか」という視点で店舗を選ぶ場合、状況は異なる。とにかくコーヒーを飲みたい時には、選択肢はコンビニだけに限らない。ドトール、エクセルシオールカフェ、スタバ、タリーズ、マクドナルドなど選択肢は増えるのだ。コンビニコーヒーがコーヒー専門店などと遜色ないからこそ、コンビニ各社は「コーヒー独自のポイントカード」を作るなどしてコーヒーを中心としたユーザー囲い込みを図るべきなのだ。「5杯飲んだら1杯無料」というようなコーヒー専用のポイントカードがあればリピート率は向上していく。
■ 最後に
コンビニの商品開発スピードは早い。こうして記事を書いている間にも、魅力的な商品が開発されていることだろう。そしてコンビニが各業界に与える刺激によって市場は活性化している。ドーナツチェーン店も商品開発にはさらに力を入れている。コーヒー専門店は、プリペイドカードやポイントカードによる囲い込み戦略を強化するなどプロモーションが活発化している。今後もコンビニコーヒーの動きから目が離せない。